野村哲郎農林水産大臣への食品産業の振興に向けた政策提言申入れ

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野村哲郎農林水産大臣への食品産業の振興に向けた政策提言申入れ

食品産業の振興に向けた政策提言(中間とりまとめ)(抄)

中小零細企業が大半を占める食品産業においては、
①デフレの中で価格決定力が弱く、厳しい価格競争を続けてきた結果、他産業に比べて利益率が低く、
②一部の大企業以外は、輸出や海外展開、DX、GX等の前向きな投資に向けた余力が少なく、
③経営者が高齢化する一方で後継者を含む人材確保等が厳しい状況にあり、
こうした状況のままでは、地域の農林水産業を含め経済や雇用に影響が生ずるおそれがある。
我が国の食品産業が事業環境の変化を乗り越えて、農林水産業とともに成長・発展していくためには、
①価格決定力を取り戻し本業の収益力を高めるとともに、単一事業に留まるのではなく、地元の農協などキーパーソンを通じて農業生産に参入するなどサプライチェーンの「垂直方向」への事業拡大や、シナジーが期待できる同業他社や近隣企業との統合・連携を通じた「水平方向」への事業拡大を行っていく必要があり、
②そのためには、複数事業の経営ができる中核的な人材と、新規事業に投資を行うための資本力が重要となる。
事業者の主体的な取組を基本としつつ、農林水産省が、十分な体制の下、関係省庁と連携を図りつつ、食品産業の発展に向けて必要な支援策を整備し取組を推進していく必要がある。

【地域の中核となる中堅規模以上の企業の育成】
意欲のある中小食品事業者が、経営力や資本力のある中堅規模以上の企業へと成長し、地域の農林水産業や食品事業者等と連携しともに成長していける環境を整備すべきである。
後継者不足等による廃業の危機にある食品事業者を取り込み、地域の特色ある食品の生産が継続できるようにしていくことに留意すべきである。
ファンドや投資円滑化法に基づく農林漁業法人等投資育成制度、農業競争力強化支援法等の既存の施策の更なる活用を図る必要がある。

【農林水産業との連携強化】
食品事業者による特色ある国産農林水産業の活用は、新たなバリューチェーンの構築により、地域の農林漁業者への利益還元につながる。
食品事業者が地域のJAなどキーとなる組織や農林漁業者と結びつきの強化を図っていくべきである。
農林漁業者も原価計算を行い、サプライチェーンを通じた価格転嫁を進めることで、適正な利益を得ることが重要である。
すでに確立した販路等を持つ流通事業者など、強みを有する地域の食品事業者が、農林漁業者の抱える販路開拓などの自身では対処が難しい課題を解決することにより、農林漁業者を経営面・技術面等で支援し関係を構築する取組や、地域の食品事業者と農林漁業者が共同して新たなビジネスを創出する取組、地域の食品事業者が自ら農業参入することにより地域の農業者と一体となって加工に適した品種の産地化を図るなど、新たなバリューチェーンを構築する取組等を推進していく必要がある。
鮮度保持のためのコールドチェーン、DX、AIなどのデジタル技術やGX技術等の活用による物流の効率化・環境負荷の低減を推進していく必要がある。

【海外を含めた多様な販路の確保】
地域に根差した食品販売の事業者育成や、輸出を目指して魅力ある食品を提供する中小企業同士の連携など、加工食品の一層の輸出促進を図るべきである。
外食事業者や流通事業者等の海外展開や効果的な販売拡大の後押しのため、中小企業政策とも連動した重点的支援や公的支援・ファンドの活用による現地事業者と国内事業者とのネットワーク形成を推進すべきである。